ぼくがブログを書く理由。

いまさらのブログ、しかも初めてのブログということで

どこからなにを書いたものか、考えあぐねています。

 

以前のぼくは「ブログなんか絶対に書くもんか」と思っていました。

ほかのみんなが書くのはいい。

むしろどんどん書いてくれ。

でも自分は書いちゃいけないんだ。

書いたら負けだ、その瞬間にすべてが終わるんだ。

そう言い聞かせてきました。

 

というのも、困ったちゃん。ぼくはライターなのです。

このライターという職業が、

ぼくにブログの開設をためらわせていたのです。

どういうことか、具体的に申し上げましょう。

 

この15年、ぼくは文章を書くことでご飯を食べてきました。

むろん食べるだけでは凍え死んでしまいます。

着るものくらいは必要ですし、住むところだって確保しなければなりません。

あるいは調子に乗って車を買ってみたり、

買ったからにはガソリンを入れたくなったり、

入れるだけでは意味がない、と温泉宿に出かけて山菜そばを食べたり、と

芋づる式にかさんでいく諸々のお金を

ひたすら書くことによって、稼いできました。

要するに、ぼくにとっての文章は「商品」なのです。

 

では、

その「商品」をこんな場所でタダ売りしてもいいのでしょうか?

 

いや、おっしゃりたいことはわかります。

フリーでシェアで、ソーシャルなお話です。

でも、考えてみてください。

 

もし、お店のコロッケをタダで配っている惣菜屋のおじさんがいたら、

そしてよく見ると、そのおじさんが自分の父親だったら、

要するに、実家が総菜屋を営んでいて、

年老いた父親がうわごとのように「フリーだシェアだハッピーだ」とつぶやきつつ

誰彼かまわず主力商品のコロッケを配りまくっていたら、

みなさんきっと全力で引き留めることでしょう。

 

無料コロッケに一定の宣伝告知効果があるのはわかります。

ひょっとしたらフリーでシェアでハッピーなのかもしれません。

しかし、問題はそれだけではないのです。

仮にそのコロッケがまずかった場合、お店はどうなりますか。

 

ただでさえ赤字を垂れ流しているのに、ここは光速無限のインターネット。

しかも無料配布のコロッケには、なんのありがたみもないのです。

「あそこのコロッケ、ひっでえ味だったよ」

「いくらタダだからって、客をバカにしてるよな」

「おっさん、これでもプロのつもり?」

「うちの犬も残してたもん」

「ま、もう二度と食うことはないわ」

「つか、おっさん普通にヤバイし」

「わんわんわん」

なんて悪意に満ちたウワサが全世界に拡散してしまえば、

総菜屋はたちまち営業停止に追い込まれ、

コロッケひと筋で生きてきたお父さんは路頭に迷い、

あれよあれよといってるあいだに一家離散の大ピンチですよ。

 

 

なので、ぼくは頑なにブログの誘惑を拒絶してきました。

「いやいや、やっぱブログっしょ」的なその場のノリ、

「時代はセルフブランディングっすよ」的なイケてる流れ、

そんな不埒な波に乗っかることで、

せっかく得てきた総菜ワークを失いたくなかったのです。

暖かい家に住み、身の丈にあった去年のフリースでも着込んで、

おとなしく雑煮や湯豆腐を食べていたいのです。

テレビを見ながらぽん酢をかけて。

 

ところがここに、

前言を翻すようにしてブログを開設してしまった自分がいます。

どうした、おれ。

一家離散の腹を固めたのか?

いやいや、やっぱブログっしょ、なのか?

もちろん違います。

 

まったくもって驚くべきことではありますが、

「どうやら文章ってのは、コロッケとは違うらしいぞ」

という衝撃の事実に気づいてしまったのです。

 

文章はコロッケじゃない。

いちおう日本語に不慣れな方のためにも申し上げておくと、

テクスト・イズント・クロケット。 オーケー?

 

きっと耳を疑うような話でしょう。

ええ。ぼくだって、にわかには信じられませんでした。

そして多くの方は、こう聞きたくなるに違いありません。

 

 

 

「じゃあ文章ってなんなんだ?」

 

 

 

そこでぼくは、

来年のはじめ、つまりは2012年の年頭に、

世間の「じゃあ文章ってなんなんだ?」に答えるための本、

すなわち文章術・文章論の本を刊行することを決意いたしました。

 

そう、本ブログ「 FUMI:2 」は、

自著刊行後のさまざまな情報発信の拠点として、開設されたのです。

いやはや、なんとまわりくどい男でしょうか。

なんとふざけた話でしょうか。

 

次回からはもう少しマシな内容にしていきますし、

そうしないことには、本気で一家離散の危機が待ち受けているでしょう。

ただの宣伝ツールにするつもりは、毛頭ありません。

 

今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

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