取材にあたっての注意事項。
前回に引き続き、取材の話を。
取材前の下調べが終わったら、今度は実際のインタビューです。
今回は考えるべきポイントが多いので、
要点のみをテンポよく紹介していきます。
ここでは仮にベンチャー起業家のAさんに取材する、としましょう。
●緊張してるのはあなただけじゃない
インタビューするとき、
まったく緊張しないという人はいないでしょう。
しかし、これは相手も同じです。
初対面の人間(ライター・記者)からあれこれ突っ込んだ質問をされるのですから
多少の緊張はありますし、
緊張とまではいかなくとも、それなりの警戒心や猜疑心はあります。
「こいつに任せて大丈夫か?」
「おれの言ってること、ちゃんと理解してるのか?」
「ちゃんと意に沿った原稿を書いてくれるのか?」
Aさんが不安を抱くのも当然ですよね。
ということで、インタビューの現場では
なるべく早く信頼関係を築くことが大切になります。
●だからこその下調べ
では、どうすれば信頼関係を築けるのか?
多くのライターは、ここで「気の利いた質問」をしようとします。
鋭い質問、頭のよさげな質問、専門家ぶった質問。
でも、気の利いた質問で信頼関係が築けるなんて、大間違いです。
実際に何度も取材を受けたことのある方はわかるでしょうが、
取材を受けるAさんは、相手(ライター)が
・どの程度自分のことを知っていて
・どの程度真剣に調べてきて
・どの程度(本気で)聞きたいことを持っているのか
あっという間に見抜いてしまいます。
場合によっては、そのライターが事前に
どの資料(記事や著書など)を読んできたのかまで、正確に見抜くほど。
ライターは隠しおおせているつもりでも、全部バレバレです。
だからこそ、下調べが大切なのです。
別に「あの本にこんなこと書いてましたね」なんて
余計なアピールをする必要はありません。
普通に話していれば、普通に伝わります。
他のライターが2~3冊しか読んでこないところを
10冊読んで取材に臨めば、その違いは言葉や態度の端々に現れます。
そして、それだけしっかり調べていることがわかれば、
「この人は信頼してもよさそうだ」と思ってもらえる。
気の利いた質問なんて、信頼関係の構築にはまったく不要なのです。
●「いつもの話」をさせない
では、仮にここで信頼関係の構築に失敗したらどうなるか?
答えはカンタン。
Aさんは「いつもの話」を始めます。
いつもの自己紹介トークをして、いつもの起業ストーリーを語り、
ライターに「いつもの記事」を書かせようとします。
なぜなら「いつもの話」とは、
Aさんにとっての「絶対にスベらない話」であり、
そのレールに乗っかって話を進めているかぎり
記事が大きな脱線事故を起こす危険は少ないからです。
相手のことを信頼していないときほど、Aさんは「いつもの話」に終始します。
ライターにとって難しいのは、
ここで語られるAさんの「いつもの話」がそれなりに面白く、
しかもスムーズに取材が進行していくことです。
Aさんは淀みなく語り、内容もコンパクトにまとまっていて面白い。
それで「いやー、今日はスムーズでいい取材ができた」と
勘違いしてしまうライターが多いのですが、まったくもって誤りです。
スムーズすぎる取材は、相手が「いつもの話」しかしていないのだ、
と思ったほうがいいでしょう。
そして「いつもの話」だけなら、わざわざ取材する必要もありません。
既刊の雑誌や本に書いてあるのですから。
せっかくお互いに貴重な時間を割いて取材するのだし、
なにか新しい話を聞き出しましょう。
これは読者のためにも、そうあるべきです。
ライターにとって大切なのは、
いかにして「いつもの話」から脱するか? という問いかけだと思います。
ということで、
どうすれば「いつもの話」から抜け出せるかについては近日中に。
(ライターの方は、ぜひ考えてみてください!)
取材の前に読むべき資料。 << 前へ 次へ >> その質問は誰の質問か?