セカイを青に染め上げよう!

ああ、なんてまっすぐな言葉なんだろう!

なんてすがすがしい青さだろう!

 

 

 

青山裕企さんの『僕は写真の楽しさを全力で伝えたい!』

これはひとりの内気で劣等感に凝り固まった少年が、

こころを開き、世界と向き合って、大人になっていくまでの物語だ。

 

大人になるとはどういうことか。

思春期に大きく膨らませたやわらかなロマンティシズムが

残酷なリアリズムに打ち砕かれていく過程のことを、そう呼ぶ。

少なくともぼくはそう思っている。

 

本書を読んで青臭いと笑う人もいるだろう。

でも、ここにあるのは一度リアリズムの冷たい風を通過した著者が、

それでもなおロマンティシズムを選ばんと決意する、

意志と覚悟に満ちた「青さ」だ。

 

人とうまく話せなかった著者にとって、

コミュニケーションの補助ツールとして出発したカメラ。

それがやがて自分を表現する絵筆になり、

いまやたくさんの「僕」に決起を促す拡声器になっている。

 

ああ、なんてまっすぐな言葉なんだろう!

なんてすがすがしい青さだろう!

 

読みながら遠くから、音楽が聞こえてきたよ。

 

 

 

 

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